■まさに「生命力」ーさい帯血とは?

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赤ちゃんとお母さんを繋ぐへその緒。
そのへその緒を通る血液を「さい帯血」と呼びます。
さい帯血には血液細胞を作り出す「造血幹細胞」が多く含まれており、赤血球や白血球などを作り出します。

このさい帯血は赤ちゃんが産まれると不要になります。
そこで、出産後に採取・保存し、白血病や再生不良貧血などの血液系難病の患者さんに移植するという取り組みがあるのです。

実は、日本はさい帯血移植件数が最も多い国であり、世界的に見ても4割を占めています。
しかしながら知名度はまだ低く、さい帯血を保存するバンクの資金調達や採取や保存の技術を持つスタッフの少なさが問題になっています。




■ライターがさい帯血移植を知ったきっかけ

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私がさい帯血移植を知ったのは去年のこと。

部活動(剣道)の先輩が白血病で亡くなったのです。

彼は高校2年生の2010年夏に急性リンパ性白血病を発症しました。
そして発症から5ヶ月後にさい帯血移植をしました。

不思議なことに、さい帯血を移植された体は、免疫がリセットされます。
つまり、水疱瘡やおたふく風邪などの免疫はなくなり、予防接種も打ち直し。
それでも体がリセットされたということは、「生まれ変わった」ようなものです。

新しい血液、新しい体に生まれ変わった彼は高校3年生から復学。
自らの経験を生かす医者になるべく、日々勉強に励んでいました。

高校卒業後も努力を続けていた彼ですが、センター試験の願書提出翌日に再発しました。
再発後も二度目の移植により延命することができましたが、2012年の桜が満開の頃に亡くなりました。

私が彼に出会ったときにはもう闘病中でしたので、一緒に剣道をしたことはありませんでした。
しかし2011年の冬、体調の良い日に練習に参加し、私の稽古の相手についてくださったのです。
発病前は部長だった彼はやはり剣道が上手で、とても良い稽古を経験できました。
あれが最初で最後の、彼との稽古でした。まさに一期一会でした。

いま思えば、一度目のさい帯血移植による延命がなければ、あのとき彼は生きていなかったかもしれません。
きっと彼が亡くなるまでに剣道をすることはなかったし、私も彼と一緒に剣道をすることはできませんでした。

結果的に彼は亡くなり、家族や友人、私たち遺された者たちは未だに寂しい日々を送っています。
それでも彼が生き延びた時間は思い出となり、いまの私たちの生きる力になっています。



■いまを生きる皆さんにお願いがあります

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私の体験談ではありますが、何らかのさい帯血に関する思いを抱いていただければ幸いです。

さい帯血移植は難病患者さんやその家族に「延命」だけではなく、笑顔や希望をも与えます。

どうか世界中の赤ちゃんが、世界中の血液難病患者さんを生まれ変わらせてほしい。

これがさい帯血移植を支える人々の願いであり、使命でもあります。


さい帯血は、出産の際に赤ちゃんが母体から出たあとに採取されます。
しかしどこの病院でも行えるというわけでなく、提携の産科施設が決められています。

ご自身やご家族が出産を控えている・考えている方、これから大人になる若い方。
皆さんにぜひ、さい帯血の提供をご検討いただきたいです。




さい帯血移植に関する詳しい情報や問い合わせは、 日本さい帯血バンクネットワークをご参照ください。








ライター:平井 晴香