現在私たち病院×アートプロジェクトが進めているのが「病院への贈り物」プロジェクトです。

これは、簡単に説明すると、
私たちが手がけた癒しのポストカードを購入していただくことで、病院にもっと手軽にアートを取り入れてもらおうというものです。
入院中の患者の方々はもちろん、忙しさに疲れを感じる医療従事者のもとなど、元気をなくしている人々のところに、このポストカードが届き、飾って日々眺めていただくことを目的としています。

アートがどこまで人々の心に届くのか。

ポストカードというささやかな規模ではありますが――
アートの持つ力を病院で発揮させたい。
このプロジェクトは私たちの挑戦とも言えるでしょう。



では、ポストカードを飾ることにどれほどの療法的効果があるのでしょう。

アートセラピーという言葉はご存知ですか?

日本では専門の資格を持って活躍するセラピストはあまりポピュラーではありませんが、
ドイツでは国家資格としてアートセラピストという職業が存在します。

アートセラピーとは、絵を描いたり、手芸をしたりすることを通して自分を表現することで、心の治療を行うことを指します。また、患者が作成者でなくても、芸術に触れることで自己の内なる感情を理解をしていくことに役立ちます。

言葉にできない表現も、芸術を通してであれば自由な表現が実現し、鬱々とした心の開放につながるのです。

今日はそんなアートセラピーの中でも、フォトアートセラピー(写真芸術療法)という分野についてご紹介したいと思います。



フォトアートセラピーとは、写真を「撮る」「見る」「選ぶ」または「撮られる」ことによって心身の健康の療法に役立てることです。
thCAOECH2E 

この療法に写真の技術などは関係ありません。自由に表現し、鑑賞し、楽しむことで明るい気持ちになれるのです。

実際、写真のモデルを見つけ、構図を考えるという動作は前頭葉を活性化させ、右脳と左脳をバランスよく働かせる効果があります。

最近はデジタルカメラの普及によって、誰でも簡単に綺麗な写真を撮ることができるようになったので、とても気軽に試せる療法のひとつだといえるでしょう。

また撮る行為に限らず、持っている写真についての思いなどを語ること、たくさんある写真の中から「素敵だ」と感じて選ぶことは私たちのストレスを発散させる力があります。

素敵な写真は、自然とその思い出を誰かと共有したくなるものですよね。
年代問わず話題のきっかけになるので、お年寄りにとっては「回想法」と呼ばれる心理療法にもつながります。
これは人生を振り返り、再評価することで自尊心を高める治癒法として精神科などで用いられる手法です。
加えて幼年期の記憶を回想することは、認知症の治療にも役立ちます。

それに気に入った写真を眺めることで、気持ちがリフレッシュすることは言うまでもありません。
少しずつ気に入ったものを自分のスペースに増やしていくことで、自己表現や創造性に富んだ生活を実現できます。

元来アートは、私たちの自発的な行動によって生じる活動の結果です。
ですから、アートを生活に取り入れていくことは、無理なくいきいきと日々を過ごす秘訣なのです。

私たち病院×アートプロジェクトからの「病院への贈り物」であるポストカードが、
そうした充実した健康的な生活と芸術の「架け橋」になることを願って、今後も活動を進めて参ります。


上森五葉