「医療はアートのサイエンスの融合である」という言葉があります。「医療者は常にアートを行う」という言葉もあって、医療者の一部にとっては座右の銘になるほどです。

あれ、芸術ってそんなに医療に浸透してるんだ.....というのは勘違い。特に医師が「アート」という時には、一般に「技術」を指しているんです。「アート」って、「人工」よりは「自然」に近い印象を持たれている方も多いかもしれませんが、英単語で「Artificial」が「人工の」という意味であることからも、実は「アート」は「人が作ったもの」「技術」を意味するんです。

技術によって「印象派」が生み出された、という指摘もあります。

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19世紀後半にフランスで誕生し、特に光の美しい描写から画壇を席巻した印象派。クロード・モネの代表作の一つ「印象 日の出」は屋外で描いたからこそできた傑作だと言われています。実は、この時代以前まで、屋外での絵画制作は困難でした。それは絵の具が運搬できなかったからです。

金属の圧延技術によって、絵の具のチューブが発明されたのは1828年。実は印象派の誕生は、「絵の具チューブ」という「技術」に裏打ちされていたのです。まさに、テクノロジーがアートを生んでいます。
 
21世紀を代表する技術といえば、情報技術ではないでしょうか。

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猪子寿之さん率いる「team Lab」が、国立台湾美術館やシンガポールビエンナーレなどで披露した作品『秩序がなくともピースは成り立つ』は、情報技術による21世紀のテクノロジーが生んだアートでしょう。これまで、こんな作品がなかったのは、技術的に不可能だったから....そんな考え方も芸術の一側面だと私は思います。

これだけの新しい技術が生まれているのに、病院の環境はナイチンゲールの時代を引きずっていていいのでしょうか。技術が生むアートがもっと医療や介護に応用が可能です。技術にチャレンジするアーティストがたくさん生まれることを切に願います。

 (ライター:深田 雄志)