ホスピタルアートなら今の病院を変えることができる。


こんにちは

このブログを通して幾つものホスピタルアートを紹介していると思います。

しかし、そもそもなぜ「治療」を目的としている訳ではない「芸術」を治療に用いるのでしょうか。

そのような事を考え始めるとなかなか頭が痛くなるのですが()少しだけ考えてみました。

また皆様はどのような考えを持って芸術を用いようとしているのでしょうか。色々な意見を聞いてみたいです…。

まず、私が芸術療法といったときに頭に浮かびやすい単語は「音楽療法」です。その音楽療法士を目指すためには、2つの道があり、一つ目が日本音楽療法学会認定音楽療法士資格受験認定校で必要な知識などを身につける方法です。そしてもう一つ目に日本音楽療法学会の主催する資格試験受験のための制度への参加をする方法があります。

…非常に大変そうですね。また、音楽に限らず、大きな括りでの「芸術療法士」という資格認定制度が存在していることをご存知でしょうか。こちらは日本芸術療法学会が平成16年度より開始した制度です。同様にこの場合も学会の主催するセミナーに参加をすることが認定の上で必要となるそうです。

ちなみにこの日本芸術療法学会はフランスを本部に置く国際表現精神病理学会の日本支部に当たるものです。

私は医療に関しての知識が無いので何ともいえませんが、これを初めとして、芸術を用いて人々に活力を与えるために奮闘している組織は幾つも存在することからも芸術は、人に何らかの作用を与えることが可能なのでしょう。

ここで精神科医でもあり、表現・創造・芸術および治療の国立研究所の所長である、ジャン=ピエール・クラインが定義する芸術療法を紹介したいと思います。

「芸術療法とは(心理的、身体的、社会的あるいは実存的な)障害を持つ人々の芸術的作品(造形、音楽、演劇、文学、ダンス)創作過程に寄り添うことである。この繊細な作業は人間の傷つきやすさを素材とし、でき上がった作品から無意識的な意味を読解することよりも、一つの創造から別な創造へと象徴的な展開を通して、自分自身の創りなおしを図ろうとするものである。芸術療法は自己を投影した謎に満ちた作品の芸術であり、自己を調べるように作品を調査する技術でもある。」

…。長いですね。しかしこのように一言で言い表すことが難しい所が、芸術の奥深く複雑な特徴でもあると感じます。

彼の定義からすると、芸術療法としてのアートは鑑賞して癒される形のものではないようですね。

しかしホスピタルアートとなると、鑑賞するタイプのものが多いように感じます。…となると、ホスピタルアートにも何らかの定義が欲しくなってくるところです。定義とまではいきませんが銅版画家でホスピタルアートに関わる仕事に幾つくか携わっている山本容子さんが、独立行政法人労働者健康福祉機構中部ろうさい病院名誉院長である堀田饒さん、産婦人科医の樋口隆造さんと対談をしている内容が書かれた本の中で仰っていることを引用したいと思います。

「アート・イン・ホスピタルは、バックグラウンドミュージックのようなものなんです。聞き流してもいい。いえ、聞き流せるようなものが、望ましいのです。かといって、なんでも良いというわけではありません。ある程度の水準を満たしている音楽でないと、良いBGMにはなりませんから。クラシック音楽やビートルズの曲は心地よいBGMになりますけれど、向いていない音楽もありますよね?アートも同じです。スタイルのある画家が、自らのエゴを消し、空間全体を考え、この場所に求められているコンセプトを表現するために専門家としての技術を駆使する。公共のために匿名で描くからこそ、それはパブリック・アートになる。素晴らしいホスピタル・アートになると思うんです。」

と、作家目線のホスピタルアートに関する思いが綴られています。

私の個人的な意見としては、何を持って「癒される」のかは鑑賞者の主観的な判断が下すものであるため、施設に芸術的趣向を凝らすことに対する活動は何とも言えないところだと思います。しかし、日本でも着実にホスピタルアートに対する関心が寄せられていることは悪くない動きですよね。




yamamoto

こちらが山本さんの作品の一部です。具体的対象物である「人」の絵を描くことは、果たしてどうなのでしょうかね??しかし非常に柔らかな作品であると思います。


…なんだかいつも以上に訳が分からない内容になってしまいましたが、今回はこの辺で。





【参考】
ジャン=ピエール・クライン『芸術療法入門』阿部惠一郎、高江洲義英訳、白水社、2004

山本容子『Art in Hospital――スウェーデンを旅して――』講談社、2013


「銅版画家山本容子さんと和医大樋口隆造准教授」

http://blog.shuheikishimoto.jp/archives/54416612.html (2014.10.22閲覧)

 



ライター:羽田綾芽



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