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こんにちは、野口です。
今回は子どもだけの世界における「生」や「死」の問題をテーマにしました。

皆さん、映画『誰も知らない』はご存じですか?

監督是枝清和、主演の柳楽優弥がカンヌ国際映画祭にて史上最年少かつ日本人で初めての最優秀主演男優賞を受賞したことでも話題になりました。

この映画の中には4人の子どもたちが出てくるのですが、柳楽演じる明以外みな「誰も知らない」子として生きています。
アパートの住民は明のことしか知らないし、明を含め子どもたちは皆学校に通っていません。
明しか外出することは許可されず(母親が大家に長男と二人暮らしだといってアパートを借りているので)社会からほぼ閉ざされた存在といえます。


彼らの母親は後に俗に言う、「女」として生きていくことを選び、たまに現金を送ってくるだけになりました。
彼らは減ってゆくお金でぎりぎりの生活を強いられ、ついにライフラインであるガスも電気も使えなくなっていきます。

この状況の中で彼らは次女の「死」に出会います。不慮の事故でした。兄弟思いの優しい明は飛行機を見たがっていた次女を空港近くに土葬し、また自分たちの家へと、生活へと、帰っていきます。

彼らが出会った死は大人不在の中で、本当に突発的、偶発的で、どうしようもなく、受け入れがたい事実だったのではないか、と推測されます。

実はこの映画はある実際の事件を題材に作られました。

「巣鴨子ども置き去り事件」です。映画と異なる点は数点あるのですが、もっとも異なる点は置き去りにされた子どもたちの『死との出会い方』でした。


三女(映画では次女)は長男の遊び友達に暴行を受け死亡し、長男の証言から遺体を雑木林に埋めていたことが判明したのです。

映画では長男はいつも兄弟を最優先に考える優しい「明」ですが、巣鴨の事件での長男の素顔は私たちには分かりません。
そして実際の事件において、子どもたちがどう死を受容しようとしたのかということも想像すらできないのではないでしょうか。

巣鴨置き去り事件は映画という、あくまで作られた「物語」よりも、残酷で、リアルです。当事者でない私たちには分からないこともたくさんあります。

しかしこの映画を想像の糧として、子どもたちの出会った圧倒的な「死」の事実に向き合おうと努力するのは、擬似的にでも子どもと共にDeath Studyする機会となり得るかもしれません。


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ライター:野口 有里恵